BONES 「交響詩篇エウレカセブン #49」 テレビアニメ 2005 原画
今回は、私が一番好きなアニメーターである吉成鋼について。
かつて弟の吉成曜と共にヴァルキリープロファイルシリーズのキャラデをしたことがあるので、イラストレーターとして名前を知っている人がいるかもしれない。
しかし、二人とも本業はアニメーターなのだ。
好きなアニメーターといいつつ、実はアニメーション以外の部分が私の吉成鋼心酔の背景になっていたりする。
とまあこういうわけで、語りにはいっていこうかと思います。
吉成鋼といえば・・・と聞かれて私が最初に思いつくのは、「作業を全部一人でやってしまう」という点だ。
これでは何を言っているかわからないと思うので、補足的にアニメーションの制作過程を簡単に説明する。
アニメーションの製作は、まず「原画」の仕事が動きのポイントになる絵を描くことから始まる。
この「原画」が、アニメーター達の主な仕事になる。
原画が終わった時点では、動きのポイントにあたる部分しか絵がない。
これでは隙間だらけで、動いているようには見えない。
動いているように見せるため、24枚/secとかになるように隙間を埋めて行くことになる。
この作業は「動画」と言われる。
原画と原画を見比べながら中を埋める絵をひたすら描いていくことになるので、多くの場合新人アニメーターが担当する。
原画と動画がそろうと、これが滑らかに動いているかどうかをチェックし、必要があれば修正を加えて行く「動画チェック・仕上げ」が入る。
動画チェックが終わると「彩色」が行われ、背景と合わせたり細部の調整をする「撮影」をして完成となる。
このようにアニメ制作は分業が基本だが、吉成鋼はこれを一人で全部やってしまうのだ。
これに関しては、「劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」に原画、動画、仕上げ、撮影協力と、エンドロールに名前が4回登場した(監督やプロデューサーよりも多い!)という逸話が残っている。
もちろんいつも全部自分でやっているわけではない。
全自分モードになるのは、何かのこだわりポイントにスイッチが入った時、さらにスケジュールに余裕があるときなんだろう。
私はアニメーターではないし一緒に仕事をしているわけでもないから、実否のほどはわからないが。
ただ、原画を異常なまでに丁寧に書くせいで一枚10時間かかったことがあるとか、めちゃくちゃ遅筆で年に1カットしか仕事しなかった年がある等の話は耳にしたことがある。
ここまで進んだところで、
「交響詩篇エウレカセブン」から動画を2つ引っ張ってきたのでひとまずご覧いただきたいと思う。
画素数を上げてから見てね。
テレビシリーズ#49
映画版 ポケットが虹でいっぱい
丁寧だなぁとか感じてくれればうれしい。
少なくとも、非のうちどこのないものだということは間違いない。
と思った人はいないだろうか。
実はこれはCGではない。
全部手書きである。
雲とか爆発のエフェクトが、全部手書きである。
背景のクオリティで画動かしたら超クオリティじゃん!とか中二の頃に考えたことはないだろうか。
現実的に考えてみると、時間がかかりすぎるから無理だということにすぐ気づくのだが。
吉成鋼はこれを実際にやってしまう、中二の伝説の中の人なのだ。
(ポケットが虹でいっぱいのカットは、これだけで半年かかったそうだ)
こういうことをするので、彼が担当したカットはいつも浮いてしまっている。
なのは無印などは、私の場合はもう吉成鋼のカットしか覚えていない。
ものを知ってくると、限界とか結果に対する過程の効率とかを自分で勝手に決めて計算するようになってしまうものだ。
これを繰り返して生きていくうちに、中二の頃に考えていたような純粋な理想は想像することすら困難になっていってしまう。
このような計算によって測定されないものは「馬鹿らしい」ものになっていってしまうからだ。
この「馬鹿らしい」ものが増えていってしまうのが大人になることであり、同時に小さくまとまることなんじゃないかな。
私にはそれが一番馬鹿らしい。
結果とか計算とか関係なくいつでも真剣で純粋で、自分の全力をやりたいように発揮する。
これが明らかに仕事を通じて伝わってくる。
自分が目指す生き方を体現しているようで本気で憧れてしまう。
アニメ界の至高の萌えキャラ、それが吉成鋼である。
・EX スタジオシルバー
いろいろあってエロゲの制作会社から独立してできたスタジオ。
当然のようにエロゲの仕事が多い。
吉成鋼はこの会社に所属している。
メンバーも、困った感じだが実力がすごいので仕事を振りたいという連中が多い(気がする)。
年に10カットぐらいしか仕事をしない時期がしばらく続き、いきなり一作品ほとんど一人で作るとかいう人が多い(という印象を持っている)。
・秋色恋華(エロゲ)
吉成鋼の他に
佐々木政勝(夕方アニメーターで、咲の作監で、エフェクトアニメーターで、エロゲ原画師。通称ささやん)
松竹徳幸(テイルズのアニメパートのキャラデ。よく仕事をする)
守岡英行(シャフト作品の作監を、なぜかこの人がやることが多い)
とかがすぐ思いつく感じ。